2015年7月27日月曜日

お知らせ(2015年8月)

ジェンダー史学会ニューズレター        2015年8月号
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このニューズレターには、会員の皆様からお寄せいただいたジェンダー
史研究関連の催事の情報のほか、公募や出版の情報などさまざまなジェ
ンダー史研究関連の情報を掲載する予定です。
情報をお気軽にお寄せいただければ幸いです。何卒よろしくお願い申し
上げます。
情報をお持ちの方は、毎月25日までに、
genderhistory1@khh.biglobe.ne.jp
までメール(テキストファイル)にてお寄せください。とりまとめて、
毎月末に会員の皆様に宛てて配信いたします。
次回の配信日は2015年8月末を予定しており、締め切りは
8月25日(火)となります。

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2015年8月号  目次

【  催事情報:2件  】  
   
(1)被爆70年 ジェンダー・フォーラム in 広島
      日時:2015年12月19日(土)・20日(日)
      場所:広島市留学生会館(予定)

(2)歴史教育の明日を探る
   ―「授業・教科書・入試」改革に向けてー
   日時:2015年8月1日(土)13:00~17:00
   場所:日本学術会議講堂

(3)イメージ&ジェンダー研究会 例会案内
   日時:2015831日(月)
   場所:上智大学(四ツ谷キャンパス)、10号館3階、301号教室
  
【  その他のお知らせ:1件  】

(1)2015年度「日本女性学習財団賞」レポート募集

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【  催事情報  】
                                      
(1)
見る!聴く!話す!
被爆70年 ジェンダー・フォーラム in 広島
Gender Forum in Hiroshima
日時:2015年12月19日(土)・20日(日)
場所:広島市留学生会館(予定) (詳細は9月決定予定)
主催:被爆70年・ジェンダー・フォーラム in 広島実行委員会
【連絡先】 TEL : 082-211-0266 /
                 E-mail : kazokusha@enjoy.ne.jp
(ジェンダー平等をめざす藤枝澪子基金・ヒロシマピースグラント 2015助成金取得)

 〈思考する広島へ〉
  1945年8月6日、アメリカによって原子爆弾が投下された広島は、今日では「緑と水の
美しい街=国際平和文化都市」となり、原爆による被害地として世界に向けて「平和
希求メッセージ」を発信している。しかし、その「国際」「平和」「文化」の内実は問われ
ることなく、ひたすら 「ノー・モア・ヒロシマ」と叫ぶだけのスローガン都市になっている
ようにも見える。本フォーラムは「ジェンダー視点だけでは世界は語れないが、ジェン
ダー視点なしでも世界は語れない」ということを共通認識とし、「廣島・ヒロシマ・広島」
をジェンダー視点で検証する。そして、これまでとは違った「平和」への回路を拓くため
に、「ヒロシマという視座の可能性」を探る試みである。
   広島は、「記憶と忘却」という問題に満ちている。たとえば、被爆や原爆表象が無罪
無垢の女性被害者として「女性化」「母性化」される傾向にあること、広島の被害が強
調されることで加害の側面が不可視化されること、被害者を「日本人」だけに捉えがち
なこと、呉・岩国という日・米基地を周辺に持つ広島で性暴力事件が起きていてもほと
んど問題にされないことなど。こうした傾向は、私たちの現在・未来の何を開き、 閉ざし
たのだろうか。そして広島は、現在「戦争をする国づくり」に邁進する日本政府にあらが
う力となり得ているのだろうか。
  これまでもジェンダー視点からの問題提起は少なからず行われてきたが、被爆から
70年の節目を迎える今日においてさらにそれを推し進めたい。そして図らずもジェンダ
ー視点が不十分であるがゆえに、誰と、何と出会い損ねていたのかを検証し、新たな
連帯への道を拓く。そのための強力な〈磁場〉となるべく、これまでジェンダー視点やフ
ェミニズムに関心を持ってきた、あるいは持とうとする市民、学生、研究者らが集い、
〈思考する広島〉へと一歩をすすめる。

    《第1日目: 12月19日(土)》
     ⑴ 「廣島・ヒロシマ・広島」についてのもうひとつの語り
         ――司会:木村尚子(広島市立大学)
       広島では1950年代初めから、ヒロシマの表象として「記憶の女性化」、
     「平和の母性化」が際立ってきた。「原爆乙女」「嵐の中の母子像」「サダコ」
    「夢千代日記」などがその一例として挙げられるのではないか。一方、軍港
     都市・呉は、10年前に開館した大和ミュージアムに象徴されるように、
    「記憶の男性化」が進行しているように見える。はたしてこの広島と呉のあ
     いだは無関係と言えるのか。こうしたジェンダー化された平和言説や原爆
     表象、都市表象が繰り返されることによって、何が不可視化され、どんな
     政治性が生まれてきたのかを考える。
     登壇者:高雄きくえ(ひろしま女性学研究所)/河口和也(広島修道大学)
     /森田裕美(中国新聞記者)/北原恵(大阪大学)/中岡志保(施設職員)
     /平井和子(一橋大学)

     ⑵ つながるために そのⅠ――司会:有元伸子(広島大学)
      1950年半ば「原子力の平和利用」推進の一翼を担い、1970年代になって
     ようやく在韓被爆者支援運動が起きた広島。そして今も日米の深い傷を背
     負う沖縄と被爆地広島との関係はいかなるものだったのか。マイノリティ
     と連帯してきたとは決して言えない歴史をもつ広島は、在日・在韓朝鮮人
     被爆者、東日本大震災による重大な原発事故に苦しむ福島の人々、辺野古
     への米軍新基地・高江へのヘリパッド基地建設阻止で闘い続ける沖縄の人
     々――こうした人々のアイデンティティ・闘い・表象もまたジェンダーの
     要素を帯びている――とどのような形でつながることができるのだろうか。
     その回路を探る。 

     登壇者:梁東淑(大阪大学)/安錦珠(広島大学)/松本麻里(批評家)
     /木村朗子(津田塾大学)/新城郁夫(琉球大学)/村上陽子(成蹊大学)
     /東琢磨(批評家)

    《第2日目:12月20日(日)》
     ⑶ つながるために そのⅡ――司会:安錦珠(広島大学)
      戦争を終わらせるための正当な手段だった、と原爆の使用を正当化する
     アメリカ。そのアメリカの核の傘の下にいながら、核兵器廃絶を訴え続け
     る日本。原爆投下を日本の植民地支配の帰結と捉え、それによって解放さ
     れたと考えるアジアの人々。こうした引き裂かれた状況と向き合い、対米
     従属に突き進むことなく、東アジアとのつながりのなかにヒロシマを位置
     づけることはできるのだろうか。ジェンダーとの絡み合いや国家・国境を
     横断するフェミニズムの試みについても考察しながら、その可能性を考え
     る。
     登壇者:高橋博子(広島平和研究所)/直野章子(九州大学)
     /鄭暎恵(大妻大学)/アンドレア・ゲルマー(九州大学)
     /阿部小涼(琉球大学)

     ⑷ フェミニズムと民族・国家・戦争―ヒロシマという視座の可能性
        ――司会:ヴェール・ウルリケ(広島市立大学)
      敗戦後の女性の参政権獲得は、在日朝鮮人の権利剥奪と表裏一体であった
     こと、女性は「平和を願う存在」だけではなく「戦争のチアガール」でもあ
     ったこと、そして日米軍人のための「慰安婦」制度を受容してきたことなど
     を考えれば、「女」に位置づけられ、「女」(または「婦人」)として運動
     してきた人々も国民・民族に依拠し、国家と共犯関係にあったことは否定で
     きない。それらの矛盾にも目を向けながらフェミニズムや女性平和運動を語
     り直し、ヒロシマを語る新たな視点、つまり、ジェンダー・セクシュアリテ
     ィ・民族・階級などを交差させながら、それらのカテゴリーに敏感な「ヒロ
     シマの視座」を紡ぎだす。そしてこうした作業を通して、〈わたし〉たちは
     どのような回路を拓けば、ヒ ロシマを個の生存と深い関わりを持つ課題とし
     て捉えうるのか、さらに個々の〈わたし〉たちはどのようにつながりうるの
     かについて考える。「思考する広島」へ、一歩でも近づくために。
      登壇者:米山リサ(トロント大学)/マヤ・モリオカ・トデスキーニ
     (ジュネーブ大学)/上野千鶴子(東京大学)/加納実紀代(女性史研究者)

      ⑸ 2日間の全体討論

 (2)
 歴史教育の明日を探る  ―「授業・教科書・入試」改革に向けてー
日時:2015年8月1日(土)13:00~17:00
場所:日本学術会議講堂(入場無料・事前予約不要)
    会場へのアクセス:http://www.scj.go.jp/ja/other/info.html

  (趣旨)
    日本学術会議・史学委員会では、これまでも高校歴史教育について、「歴史基礎」
の設置、用語の見直しやジェンダー視点を入れた教科書の書き換え等の提言を行っ
てきました。今回のシンポジウムでは、ジェンダー視点の重視とともに、模索が続く「授
業・教科書・入試」という3つの改革を連動させて、新しい歴史教育の実践を具体的に
考えたいと思います。
  第一部で「改革の三位一体」を現場の声とつなぐ議論をした後、第二部では、その
教材実例として「慰安婦」問題を取り上げます。アメリカの歴史学者らから出された「日
本の歴史家を支持する声明」(2015年5月5日)や、「「慰安婦」問題に関する日本の歴
史学会・歴史教育者団体の声明」(2015年5月25日)といった研究者の声、歴史研究の
成果は、教育現場にどのように反映されるのでしょうか。実践的に探ってみたいと思い
ます。

(プログラム)
   ◆13:00 趣旨説明 井野瀬久美恵(第一部会員・甲南大学教授)
   ◆13:10~14:40 
   第一部 授業・教科書・入試
       ~歴史教育改革を三位一体で考える~ 
   ○報告1 歴史教科書をどう書き換えるか?―ジェンダーの視点から
        三成美保(第一部会員・奈良女子大学教授)
   ○報告2 高校歴史教育のあり方をめぐる議論
        久保亨(第一部会員・史学委員会委員長・信州大学教授)
   ○報告3 制度の壁か思考の壁か?―暗記オンリーでない歴史の試験をめざ
        して
        桃木至朗(連携会員・大阪大学教授)
   ○コメント 現場の声をつなぐ
         小川幸司(長野県長野高等学校教頭)
   ◆14:50~15:45 
   第二部 教材実例としての「慰安婦」問題
       ~研究の到達点を踏まえた教育実践と市民の育成~ 
   ○報告1 長志珠絵(連携会員・神戸大学教授)
   ○報告2 小浜正子(連携会員・日本大学教授)
   ○コメント ドイツとの比較から
        姫岡とし子(連携会員・東京大学教授)
   ◆15:45~16:55 総合討論 
   司会:井野瀬久美恵・平野千果子(連携会員・武蔵大学教授)
   ◆16:55 閉会の辞 久留島典子(第一部会員・東京大学教授)
  (主催等)
   主 催:日本学術会議史学委員会歴史学とジェンダーに関する分科会
   共 催:日本学術会議史学委員会歴史認識・歴史教育等分科会
       科研費基盤研究(A)「ジェンダー視点に立つ『新しい世界史』の
       構想と『市民教養』としての構築・発信」 
       http://ch-gender.jp/wp/
   後 援:ジェンダー史学会・日本史研究会・日本教育学会
   問い合わせ先:甲南大学井野瀬研究室 kumie.inose@cao.go.jp

(3)

イメージ&ジェンダー研究会 例会案内■■■

 

 日時:2015831日(月)

 場所:上智大学(四ツ谷キャンパス)、10号館3階、301号教室

 

 ■運営会議:12:3013:30

 ■研究会:   13:3017:30

(*研究会後、懇親会予定)

 

(1)北原恵(大阪大学)13:3015:20

  「"モダン"と”伝統”を生きた日本画家・谷口富美枝」

 

  コメンテーター:角田知扶(呉市美術館)

 

 (2)金子牧(カンザス大学)15:3017:30

  「北米での日本近代美術研究と"Asian-American"Artの視座」

 

  コメンテーター:村井則子(上智大学)

 

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 ■企画趣旨

 

  今回は、カンザス大学の金子牧さんをお招きして、「北米での日本近代美術研究

と”Asian-American" Artの視座」についてお話しいただきます。二番目の発表

(北原恵)で取り上げる谷口富美枝は、戦後、渡米して、その後の半生をアメリ

カで終えた画家です。カンザス大学の美術館や、呉市美術館は、谷口富美枝の作

品を所蔵しており、呉市美では今年、谷口の展覧会が開かれました。

 例会では日米の研究者による調査が始まりつつある最新の状況を紹介し、”Asian-AmericanArt

をめぐる議論を参照しながら、「日本人」アーティスト概念や研究の枠組みにつ

いても再考したいと思います。

 

 

 ■会場案内

 上智大学は、四ツ谷駅から徒歩5分。

 会場は、10号館3階、301号教室です。図書館前にある6階建ての白いコンクリー

トの建物です。


 

 ■共催:イメージ&ジェンダー研究会

  科研(基盤C)「軍事主義から見る女性美術家と視覚表象」

 

 ■お問い合わせ:imagegender@yahoo.co.jp

 

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■発表要旨

 

(1)北原恵(大阪大学)

 「"モダン"と”伝統”を生きた日本画家・谷口富美枝」

 

 本発表は、最近、研究の始まった谷口富美枝に関する調査や資料紹介などを主

な目的とする。谷口富美枝(仙花)は、女子美術学校と文化学院で学び、青龍社

で活躍していた1930年代には、そのモダンな女性像で画壇で俄かに注目を浴びた

日本画家である。戦時中には長谷川春子の率いる女流美術家奉公隊も参加、戦争

末期、呉市に疎開した。戦後、渡米し、日系人の同人誌『南加文芸』に小説など

の自伝的文章も残している。

 これまで渡米後の足跡については、家族にすらほとんど知られていなかったが、

3年前に呉市で作品が呉市美術館に寄贈されたことから、地元の新聞記者や家族

・学芸員・研究者らの協力で少しずつ谷口の人生がわかってきた。その調査の最

新状況を紹介する。

 

 

(2)金子牧(カンザス大学)

 「北米での日本近代美術研究と"Asian-American"Artの視座」

 

 本発表は、北米における日本近代美術研究の現状、そして近隣学問領域であり

ながら紹介される機会が比較的少ないと思われるAsian-American artの研究史を

概観・考察する。先ず、近年出版された日本近代美術関連の研究書及び博士論文

の検証を通じ、現在の研究状況を大まかに把握する。その上で、Asian-American

artの研究史へと焦点を移す。Asian-American art historyは、制度的サポート

と社会的理解の欠如に苦しみながらも、過去四十年にわたって研究・展覧会活動

が続けられてきた。近年、こうした努力が一定の成果を上げたと認識されている。

更に北米におけるアジア系移民の増加・多元化といった状況を受け、より多層的

・越境的な”Asian-American”の枠組みの構築を目指す新たな局面を迎えている。

 

 こうした“Asian-American art研究の動きが、「日本」近代美術研究に示唆

するものは決して少なくないだろう。 “Asian-American”の均質性を問い直す

視点や“Transpacific”などの新たなフレームワークは、戦後に渡米・移住を選

択した谷口富美枝を含む多くの「日本人」アーティストを再考するための、一つ

の視座と考えられる。

 


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【  その他のお知らせ  】

(1)【2015年度日本女性学習財団賞レポート募集】
   http://www.jawe2011.jp/nii_awards/index2015.html
   公益財団法人日本女性学習財団では、男女共同参画社会実現のために、
  社会・地域・家庭の中でさまざまな困難や課題を乗り越えてきた過程を
  ふり返った実践・研究レポートを募集します。
   レポートの内容は、社会教育・生涯学習活動、女性運動、NPOおよ
  びNGO活動、地域活動、家庭生活、職業生活、震災経験や復興に向け
  た営みなど、はば広い領域を対象とします。
  賞-------------大 賞 1篇 副賞 10万円
                   奨励賞 2篇 副賞 各5万円
                   ※特に選考委員から推薦があった場合、
                   選考委員特別賞(副賞1万円)を設けることもあります。
  応募資格----趣旨に関心をもつ個人およびグループ。
                性別・国籍を問いません。
  締切----------2015年8月31日(月) 当日消印有効
  ※詳しくはホームページをご覧ください。
   http://www.jawe2011.jp/nii_awards/index2015.html

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 会員からの催し物・募集等のお知らせについては、当学会は責任を負いま
せん。また、お問い合わせも当学会主催による催し物・募集等以外について
は、各主催者に直接お問い合わせいただけますよう、お願い申し上げます。
 
                       ジェンダー史学会事務局