2015年8月26日水曜日

「お知らせ(2015年9月)」

ジェンダー史学会ニューズレター        2015年9月号
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このニューズレターには、会員の皆様からお寄せいただいたジェンダー
史研究関連の催事の情報のほか、公募や出版の情報などさまざまなジェ
ンダー史研究関連の情報を掲載する予定です。
情報をお気軽にお寄せいただければ幸いです。何卒よろしくお願い申し
上げます。
情報をお持ちの方は、毎月25日までに、
genderhistory1@khh.biglobe.ne.jp
までメール(テキストファイル)にてお寄せください。とりまとめて、
毎月末に会員の皆様に宛てて配信いたします。
次回の配信日は2015年9月末を予定しており、締め切りは
9月25日(金)となります。

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2015年9月号  目次

【  催事情報:4件  】  
   
(1)被爆70年 ジェンダー・フォーラム in 広島
      日時:2015年12月19日(土)・20日(日)
      場所:広島市留学生会館(予定)

(2)イメージ&ジェンダー研究会 例会
      日時:2015年8月31日(月)13:30~17:50
      場所:上智大学(四ツ谷キャンパス)

(3)総合女性史学会 近世例会
   「11代将軍の娘の花嫁道中――溶姫を例に」
   日時:9月26日(土)13:30~15:45 
   場所:文京区男女平等センター 

(4)総合女性史学会 近現代史例会   
   「高群逸枝と村上信彦―戦後女性史を立ち上げた同志 」
   日時:10月18日(日) 13:30~16:30
   場所:文京区男女平等センター 
  
【  その他のお知らせ:1件  】

(1)2015年度「日本女性学習財団賞」レポート募集

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【  催事情報  】
                                      
(1) 見る!聴く!話す!
    被爆70年 ジェンダー・フォーラム in 広島
       Gender Forum in Hiroshima
       日時:2015年12月19日(土)・20日(日)
   
    場所:広島市留学生会館(予定)
      (詳細は9月決定予定)

       主催:被爆70年・ジェンダー・フォーラム in 広島実行委員会
      【連絡先】 TEL : 082-211-0266 /
                 E-mail : kazokusha@enjoy.ne.jp
      (ジェンダー平等をめざす藤枝澪子基金・ヒロシマピースグラント
        2015助成金取得)

      〈思考する広島へ〉
      1945年8月6日、アメリカによって原子爆弾が投下された広島は、今日
     では「緑と水の美しい街=国際平和文化都市」となり、原爆による被害
     地として世界に向けて「平和希求メッセージ」を発信している。しかし、
     その「国際」「平和」「文化」の内実は問われることなく、ひたすら
     「ノー・モア・ヒロシマ」と叫ぶだけのスローガン都市になっているよ
     うにも見える。本フォーラムは「ジェンダー視点だけでは世界は語れな
     いが、ジェンダー視点なしでも世界は語れない」ということを共通認識
     とし、「廣島・ヒロシマ・広島」をジェンダー視点で検証する。そして、
     これまでとは違った「平和」への回路を拓くために、「ヒロシマという
     視座の可能性」を探る試みである。

      広島は、「記憶と忘却」という問題に満ちている。たとえば、被爆や
     原爆表象が無罪無垢の女性被害者として「女性化」「母性化」される傾向
     にあること、広島の被害が強調されることで加害の側面が不可視化され
     ること、被害者を「日本人」だけに捉えがちなこと、呉・岩国という日
     ・米基地を周辺に持つ広島で性暴力事件が起きていてもほとんど問題に
     されないことなど。こうした傾向は、私たちの現在・未来の何を開き、
     閉ざしたのだろうか。そして広島は、現在「戦争をする国づくり」に邁
     進する日本政府にあらがう力となり得ているのだろうか。
      これまでもジェンダー視点からの問題提起は少なからず行われてきた
     が、被爆から70年の節目を迎える今日においてさらにそれを推し進めた
     い。そして図らずもジェンダー視点が不十分であるがゆえに、誰と、何
     と出会い損ねていたのかを検証し、新たな連帯への道を拓く。そのため
     の強力な〈磁場〉となるべく、これまでジェンダー視点やフェミニズム
     に関心を持ってきた、あるいは持とうとする市民、学生、研究者らが集
     い、〈思考する広島〉へと一歩をすすめる。

    《第1日目: 12月19日(土)》
     ⑴ 「廣島・ヒロシマ・広島」についてのもうひとつの語り
         ――司会:木村尚子(広島市立大学)
       広島では1950年代初めから、ヒロシマの表象として「記憶の女性化」、
     「平和の母性化」が際立ってきた。「原爆乙女」「嵐の中の母子像」「サダコ」
    「夢千代日記」などがその一例として挙げられるのではないか。一方、軍港
     都市・呉は、10年前に開館した大和ミュージアムに象徴されるように、
    「記憶の男性化」が進行しているように見える。はたしてこの広島と呉のあ
     いだは無関係と言えるのか。こうしたジェンダー化された平和言説や原爆
     表象、都市表象が繰り返されることによって、何が不可視化され、どんな
     政治性が生まれてきたのかを考える。
     登壇者:高雄きくえ(ひろしま女性学研究所)/河口和也(広島修道大学)
     /森田裕美(中国新聞記者)/北原恵(大阪大学)/中岡志保(施設職員)
     /平井和子(一橋大学)

     ⑵ つながるために そのⅠ――司会:有元伸子(広島大学)
      1950年半ば「原子力の平和利用」推進の一翼を担い、1970年代になって
     ようやく在韓被爆者支援運動が起きた広島。そして今も日米の深い傷を背
     負う沖縄と被爆地広島との関係はいかなるものだったのか。マイノリティ
     と連帯してきたとは決して言えない歴史をもつ広島は、在日・在韓朝鮮人
     被爆者、東日本大震災による重大な原発事故に苦しむ福島の人々、辺野古
     への米軍新基地・高江へのヘリパッド基地建設阻止で闘い続ける沖縄の人
     々――こうした人々のアイデンティティ・闘い・表象もまたジェンダーの
     要素を帯びている――とどのような形でつながることができるのだろうか。
     その回路を探る。 

     登壇者:梁東淑(大阪大学)/安錦珠(広島大学)/松本麻里(批評家)
     /木村朗子(津田塾大学)/新城郁夫(琉球大学)/村上陽子(成蹊大学)
     /東琢磨(批評家)

    《第2日目:12月20日(日)》
     ⑶ つながるために そのⅡ――司会:安錦珠(広島大学)
      戦争を終わらせるための正当な手段だった、と原爆の使用を正当化する
     アメリカ。そのアメリカの核の傘の下にいながら、核兵器廃絶を訴え続け
     る日本。原爆投下を日本の植民地支配の帰結と捉え、それによって解放さ
     れたと考えるアジアの人々。こうした引き裂かれた状況と向き合い、対米
     従属に突き進むことなく、東アジアとのつながりのなかにヒロシマを位置
     づけることはできるのだろうか。ジェンダーとの絡み合いや国家・国境を
     横断するフェミニズムの試みについても考察しながら、その可能性を考え
     る。
     登壇者:高橋博子(広島平和研究所)/直野章子(九州大学)
     /鄭暎恵(大妻大学)/アンドレア・ゲルマー(九州大学)
     /阿部小涼(琉球大学)

     ⑷ フェミニズムと民族・国家・戦争―ヒロシマという視座の可能性
        ――司会:ヴェール・ウルリケ(広島市立大学)
      敗戦後の女性の参政権獲得は、在日朝鮮人の権利剥奪と表裏一体であった
     こと、女性は「平和を願う存在」だけではなく「戦争のチアガール」でもあ
     ったこと、そして日米軍人のための「慰安婦」制度を受容してきたことなど
     を考えれば、「女」に位置づけられ、「女」(または「婦人」)として運動
     してきた人々も国民・民族に依拠し、国家と共犯関係にあったことは否定で
     きない。それらの矛盾にも目を向けながらフェミニズムや女性平和運動を語
     り直し、ヒロシマを語る新たな視点、つまり、ジェンダー・セクシュアリテ
     ィ・民族・階級などを交差させながら、それらのカテゴリーに敏感な「ヒロ
     シマの視座」を紡ぎだす。そしてこうした作業を通して、〈わたし〉たちは
     どのような回路を拓けば、ヒ ロシマを個の生存と深い関わりを持つ課題とし
     て捉えうるのか、さらに個々の〈わたし〉たちはどのようにつながりうるの
     かについて考える。「思考する広島」へ、一歩でも近づくために。
      登壇者:米山リサ(トロント大学)/マヤ・モリオカ・トデスキーニ
     (ジュネーブ大学)/上野千鶴子(東京大学)/加納実紀代(女性史研究者)

      ⑸ 2日間の全体討論

 (2) イメージ&ジェンダー研究会 例会

        日時:2015年8月31日(月)
       
        場所:上智大学(四ツ谷キャンパス)、10号館3階、301号教室

       運営会議:13:00~13:30
     研究会:  13:30~17:50
                 (*研究会後、懇親会予定)

        [1] 北原恵(大阪大学)13:30~15:20
          「"モダン"と”伝統”を生きた日本画家・谷口富美枝」

           コメンテーター:角田知扶(呉市立美術館)

        [2] Scott Tsuchitani (visual artist) 15:30~16:00
           "Questioning Japaneseness and Japanese Americanness through Visual Art"
           (発表は英語、逐次通訳あり)
 
        [3] 金子牧(カンザス大学)16:00~17:50
          「北米での日本近代美術研究と"Asian-American"Artの視座」

           コメンテーター:村井則子(上智大学)

        ■企画趣旨

         今回は、カンザス大学の金子牧さんをお招きして、「北米での日本近代
        美術研究と”Asian-American" Artの視座」についてお話しいただきます。
        最初の発表(北原恵)で取り上げる谷口富美枝は、戦後、渡米して、その
        後の半生をアメリカで終えた画家です。カンザス大学の美術館や、呉市立
        美術館は、谷口富美枝の作品を所蔵しており、呉市立美術館では今年、谷
        口の展覧会が開かれました。
         例会では日米の研究者による調査が始まりつつある谷口富美枝研究や、
        北米での日本近代美術研究の最新の状況を紹介し、サンフランシスコを拠
        点に活動するアーティストのスコット・ツチタニさんによる作品紹介をし
        ていただきます。そして、”Asian-American”Artをめぐる議論を参照し
        ながら、「日本人」アーティスト概念や研究の枠組みについても再考した
        いと思います。

        ■会場案内
          上智大学は、四ツ谷駅から徒歩5分。
          会場は、10号館3階、301号教室です。図書館前にある6階建ての白いコ
        ンクリートの建物です。
        http://www.sophia.ac.jp/jpn/info/access/accessguide/access_yotsuya

        ■共催:イメージ&ジェンダー研究会
             科研(基盤C)「軍事主義から見る女性美術家と視覚表象」

        ■お問い合わせ:imagegender@yahoo.co.jp


   ■発表要旨
     [1] 北原恵(大阪大学)
            「"モダン"と”伝統”を生きた日本画家・谷口富美枝」
        本発表は、最近、研究の始まった谷口富美枝に関する調査や資料紹介など
       を主な目的とする。谷口富美枝(仙花)は、女子美術学校と文化学院で学び、
       青龍社で活躍していた1930年代には、そのモダンな女性像で画壇で俄かに注
       目を浴びた日本画家である。戦時中には長谷川春子の率いる女流美術家奉公
       隊も参加、戦争末期、呉市に疎開した。戦後、渡米し、日系人の同人誌『南
       加文芸』に小説などの自伝的文章も残している。
        これまで渡米後の足跡については、家族にすらほとんど知られていなかっ
       たが、3年前に呉市で作品が呉市美術館に寄贈されたことから、地元の新聞記
       者や家族・学芸員・研究者らの協力で少しずつ谷口の人生がわかってきた。
       その調査の最新状況を紹介する。
       
       [2] Scott Tsuchitani
      "Questioning Japaneseness and Japanese Americanness through Visual Art"
      参考までに、http://www.scotttsuchitani.com/index.html
        
       [3] 金子牧(カンザス大学)
           「北米での日本近代美術研究と"Asian-American"Artの視座」
       本発表は、北米における日本近代美術研究の現状、そして近隣学問領域であ
      りながら紹介される機会が比較的少ないと思われるAsian-American artの研究
      史を概観・考察する。先ず、近年出版された日本近代美術関連の研究書及び博
      士論文の検証を通じ、現在の研究状況を大まかに把握する。その上で、Asian-
      Americanartの研究史へと焦点を移す。Asian-American art historyは、制度的
      サポートと社会的理解の欠如に苦しみながらも、過去四十年にわたって研究・
      展覧会活動が続けられてきた。近年、こうした努力が一定の成果を上げたと認
      識されている。更に北米におけるアジア系移民の増加・多元化といった状況を
      受け、より多層的・越境的な”Asian-American”の枠組みの構築を目指す新た
      な局面を迎えている。
       
        こうした“Asian-American” art研究の動きが、「日本」近代美術研究に示
      唆するものは決して少なくないだろう。 “Asian-American”の均質性を問い直
      す視点や“Transpacific”などの新たなフレームワークは、戦後に渡米・移住
      を選択した谷口富美枝を含む多くの「日本人」アーティストを再考するための、
      一つの視座と考えられる。

(3) 総合女性史学会 近世例会のお知らせ
    テーマ:「11代将軍の娘の花嫁道中――溶姫を例に」
    
    報告者:長島淳子(群馬大学非常勤講師ほか)
    
         日時:9月26日(土)13:30~15:45 
    ※報告終了後、16:00ごろからフィールドワーク。希望者で皇居平川門まで溶
     姫通過の道を歩きます(約3キロメートル・雨天決行)
    
         場所:文京区男女平等センター D研修室
    
    要旨:文政10年11月、11代将軍徳川家斉の娘・溶姫は加賀藩当主前田斉泰との
       婚儀が整い、「御引移」の運びとなります。江戸城から本郷の加賀藩上
       屋敷(現東京大学本郷キャンパス)まで花嫁行列の通過の道筋に対し、
       幕府は事細かな指示を出しています。幕府と庶民の関係を「御引移」の
       条項を検討する中から浮かび上がらせたいと思います。
 

(4) 総合女性史学会 近現代史例会   
    テーマ「高群逸枝と村上信彦―戦後女性史を立ち上げた同志 」
    
    報告者 江種(えぐさ)満子氏(日本近現代文学、文教大学名誉教授)
 
    日時:10月18日(日) 13:30~16:30
 
    場所:文京区男女平等センター B研修室  
       https://www.bunkyo-danjo.jp/access.aspx
    
    要旨:高群逸枝と村上信彦―この二人の女性史家は、戦後16年間書簡をとおし
       て互いに励まし合いつつ、それぞれの戦後女性史学を確立した。このこと
       は、村上側のご遺族が日本近代文学館に125通の往復書簡を寄贈された
       ことによって、明らかになった。館の『近代文学館年誌』10号(2015・3)
       には全書簡が翻刻公開され、そこに江種は論考を寄せた。今回の報告は拙
       論に沿って、二人が書簡体小説を合作するかのように親しく手紙を交わし、
       高群の死まで「相互扶助」的に仕事を進めた経緯と意義について、お話し
       したい。
   
    【参考文献】
         『日本近代文学館年誌』10号(2015・3)
         高群逸枝『女性の歴史』その他。
         村上信彦『女について 反女性論的考察』(復刊 こぶし書房1997)
            同『服装の歴史』など。
    連絡先:jimukyoku@sogojoseishi.com

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【  その他のお知らせ  】

(1)【2015年度日本女性学習財団賞レポート募集】
   http://www.jawe2011.jp/nii_awards/index2015.html
   公益財団法人日本女性学習財団では、男女共同参画社会実現のために、
  社会・地域・家庭の中でさまざまな困難や課題を乗り越えてきた過程を
  ふり返った実践・研究レポートを募集します。
   レポートの内容は、社会教育・生涯学習活動、女性運動、NPOおよ
  びNGO活動、地域活動、家庭生活、職業生活、震災経験や復興に向け
  た営みなど、はば広い領域を対象とします。
  賞-------------大 賞 1篇 副賞 10万円
                   奨励賞 2篇 副賞 各5万円
                   ※特に選考委員から推薦があった場合、
                   選考委員特別賞(副賞1万円)を設けることもあります。
  応募資格----趣旨に関心をもつ個人およびグループ。
                性別・国籍を問いません。
  締切----------2015年8月31日(月) 当日消印有効
  ※詳しくはホームページをご覧ください。
   http://www.jawe2011.jp/nii_awards/index2015.html

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 会員からの催し物・募集等のお知らせについては、当学会は責任を負いま
せん。また、お問い合わせも当学会主催による催し物・募集等以外について
は、各主催者に直接お問い合わせいただけますよう、お願い申し上げます。
 
                       ジェンダー史学会事務局